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補強板用接着剤の材料

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補強板をフレキシブル基板に固定するためには接着剤が必要です。接着剤にも特徴があります。

補強板の接着剤

 フレキシブル基板に補強板を固定する接着剤は、大きく分けると感圧性接着剤タイプと熱硬化性接着剤タイプの二種類となります。それぞれ加工方法が大きく異なっており、性能にも差があります。

 感圧性接着剤は、いわゆる粘着テープ状の材料で、簡単な手順で被着体を貼り付けることができますが、クリープ現象という性質により継続的に引っ張り応力がかかっていると、次第に剥がれたりズレたりします。強引に剥がしても、剥離面を合わせて圧力をかければ、再び接着します。

 一方、熱硬化性接着剤は、エポキシ樹脂に代表されるように、半硬化状態で供給される接着剤を被着体の間に挟み、加熱加圧すると樹脂分子の架橋反応が進み固まります。一旦硬化反応が完了すると、簡単には剥がすことはできませんが、無理に剥がすと接着界面は破壊され、破壊面を合わせても再び接着することはありません。次の表は両者を比較したものです。

表1. 接着剤のタイプによる比較

感圧性接着剤 熱硬化性接着剤
材料費 安価 安価
保存寿命 室温で1年以上 冷蔵庫保管で半年未満
加工条件 室温で若干の加圧 150℃、10kg/㎠以上、30分以上
接着力 相対的に低い 高くて安定
クリープ現象 あり 小さい
再接着 可能 困難
被着体 幅広い 限定
加工プロセス 簡単 煩雑
前処理 なし 表面クリーニングが必要
耐熱性 あまり高くない、一部はんだ耐熱性あり はんだ耐熱性あり

 

感圧性接着剤加

 感圧性接着剤は、通常両面粘着テープと同じような状態で供給され、フィルム状の接着剤の片面、もしくは両面に離型シートがラミネートされています。これを適切な形状にカットし、片側の離型シートを剥がした上で、被着体の片方に貼り付けます。次いで残りの離型シートを取り除いた上で、もう一方の被着体を重ね合わせ、圧力をかけます。補強板が小さければ、手で軽く押し付ける程度でも十分ですが、接着面積が大きい場合には、圧力が均一になるように、ロールラミネータか油圧プレスのような加圧装置が必要になります。

熱硬化性接着剤

 フレキシブル基板の中で補強板はマイナーな部分と見られがちですが、近年モバイル機器などに使われるフレキシブル基板は高密度化、高機能化が進んでおり、特に接続部については高い寸法精度と信頼性が要求されるようになっています。このため、接続部の補強構造にも高い信頼性が必要になり、ポリイミドシートを熱硬化性接着剤で貼り合わせる構成が多くなっています。一般的に熱硬化性接着剤は、はんだ付けプロセスの高温に耐えます。一方で、熱硬化性接着剤を使った補強板貼り付け加工は煩雑で、フレキシブル基板の製造コストを押し上げる大きな要因になりかねません。

 フレキシブル基板用の熱硬化性接着剤はフィルム状で、感圧性接着剤と同様に、両面に離型シートがラミネートされた形でメーカーから供給されます。これに金型などを使って、穴加工、外形加工を施した上で、補強板にラミネートします。さらにこの補強板を必要に応じて外形穴加工します。場合によっては、並行してダミーボードを加工して準備しておきます(これらの手順は、補強板の構成によって変わります)。各材料がそろったところで、全ての材料を組み上げ、高温プレスで高温高圧をかけて30分以上維持します。この時使うクッション材料によって、工程の歩留まりが大きく左右されます。最後に冷却して解体、ようやく熱硬化性接着剤を使った補強板加工工程の完了です。

 材料メーカーから供給される熱硬化性接着剤は、樹脂が半硬化した状態で、そのまま室温に保管しておくと架橋反応がどんどん進行してしまい、数週間の内には接着剤としての性能が失われてしまいます。このため、熱硬化性接着剤は、原則として冷蔵庫に保管しますが、それでも材料メーカーが保証するポットライフは、3ヶ月程度です。困ったことに保証期間内でも、熱硬化性接着剤の性能は微妙に変化します。熱硬化性接着剤の性能を最高レベルで維持するには、接着剤の性能を良く理解して、それに応じたプロセス条件を出すことが必要になります。

 なお、アクリル系の熱硬化性接着剤の中には、室温で保管してもポットライフが6ヶ月以上に及ぶ製品があります。しかし、このような熱硬化性接着剤は、かなり高温での接着加工が必要になります。

その他の接着剤タイプ

 感圧性接着剤や熱硬化性接着剤の他にも接着剤の材料がありますが、フレキシブル基板用として汎用性があるとはいえません。しかしながら、特定用途で価値があるのであれば、使うことを制限されるわけではありません。例えば空気中の水分と反応して硬化する、シリコーンRTVタイプなどがあります。このタイプは、加熱加圧が必要ないので、シール性が必要なケースでは重宝されています。

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