回路図入力とネットリスト
回路図入力システムは、回路図をきれいに作図するだけでなく、「ERC(電気的ルールチェック)」と「論理シミュレータ」という2つのチェック機能を備えています。複数のシステム間で接続情報をやりとりするには、ネットリストを使います。回路図入力とネットリストについて、理解を深めてみましょう!
回路図入力
電子回路やデジタルシステムの論理を考えたり、定義したりするときには、論理図や論理回路図、回路図などと呼ばれる図面を使います。
CADやSPICEなどシミュレータで使われる文字による接続情報と違い、回路図、論理回路図といった図面は、「どの信号がどのような素子の間で接続されているか」が一目で分かります。
このため、多くのメーカーが回路図入力システムを製品化しています。回路図入力システムは回路図をきれいに作成するだけでなく、CADや論理シミュレータ、回路シミュレータなどへの接続情報を出力します。
CADシステムと連動した回路図入力システムは、それぞれが双方向に連動した使いやすい総合システムとなっています。例えば、回路図画面で部品をピックすると、基板設計画面で指示された部品がハイライト表示されます。逆に基板設計画面で部品を指示すると、回路図画面上の部品がハイライトします。これをクロスプロービング機能と呼んでいます。
さらに、基板設計のための配線の長さ指定や平行配線指示などの制約条件(コンストレイント)なども、回路図入力システムから基板設計CADへとスムーズに伝わるようになっています。
回路図のチェック機能は2種類ある
基板設計CADシステムは、回路図入力システムで入力された「回路図通りの回路」を基板上に実現します。回路図が正しく入力されたかどうかはERC(電気的ルールチェック)機能でチェックします(図1)。
図1. 回路図入力システムのチェック機能
このERCは、回路図が間違っていないかをチェックしますが、「回路が論理通り動作するか」のチェックはしてくれません。回路の論理的動作が正しいかどうかを判断するためには、論理シミュレータを使います。
回路図入力システムは、この論理シミュレータへの回路図入力の役割も担っています。
基板設計CADと論理シミュレータでは、全く異なる接続情報が必要とされます。基板設計CADでは、「IC1の3番ピンとIC5の10番ピンの接続」などのように物理的な接続情報。それに対して、論理シミュレータでは「ゲートAの出力ピンをゲートCの制御ピンに接続する」などの論理的な接続情報が必要です。
回路図入力システムは、これら両方の出力をサポートしています。
このように、回路図入力システムとレイアウト設計CADが密接に統合されているとシステム間で正確な受け渡しができます。しかし、常に回路図入力と基板設計CADを同じCADベンダーの同じシステムで使うとは限りません。
ネットリスト入力
異なる企業が開発した回路図入力システムと基板設計CADシステムの間で、接続情報を正しく伝えるには、「ネットリスト」と呼ばれるテキストファイルを利用します。(図2)。
図2. 異なるシステム間での接続情報の受け渡し
このネットリストのフォーマットはCADシステムによって異なり、それぞれフォーマットは公開されています。また、ネットリストは分かりやすいテキストフォーマット形式のため、異なる基板設計CAD間のデータ変換などにもよく使われます。(図3)。
図3. 異なる会社のCAD間での接続情報の受け渡し
「EDIF200(Electronic Design Interchange Format 200)」と呼ばれる標準のネットリストフォーマットも規定されており、サポートしている回路図入力システムとCADシステムも存在しています。
回路の定義にも使うネットリスト
ネットリストは、レイアウトCADのためだけでなく、回路を定義する方法としても使われています。例えば、回路シミュレータとして有名なSPICEシミュレータでは、SPICE形式のネットリストを使います(図4)。
図4. SPICE形式のネットリスト
小規模な回路では、論理シミュレーションを実行しないこともあります。その場合、回路図入力をせず、手書きの回路図を参考に直接入力でネットリストの作成や、レイアウトCAD上へ直接結線を入力したりします。
このような場合、レイアウトCADの現接続情報を、ネットリストとしてテキストファイルに出力する機能を使用し、回路図の入力エラー箇所を確認することも可能です。
ネットリストは1つのファイルだけで、全ての接続情報を定義する場合もありますが、接続情報と部品情報を分けたり、設計制約条件も付加したりと、各社各様の形式が定義され、広く活用されています(図5)。
図5. Allegro形式のネットリスト
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本記事は、「Allegroで学ぶ実践プリント配線板設計」(発行元:株式会社ジー・ビー)から一部転載しています。