シルク印刷(その2)――印刷の仕組みを覚えておこう
プリント基板に部品の番号や外形を記すシルク印刷。“美しいシルク印刷”のためのコツを紹介しましょう。第3回は、「シルク印刷がどのような製造工程で印刷されるか」とともに、製造工程やコストに配慮したシルクの書き方のコツなどを紹介していきましょう。
シルクとは
シルク印刷の“シルク”は「絹」を意味する「シルク」が由来なのですが、なぜそう呼ばれるようになったか、ご存じでしょうか?
実は、その昔、絹を用いた印刷が行われていたからです。
印刷にはさまざまな種類があり、次のような代表的な印刷方法が今も使用されています。
- オフセット印刷:印刷の最も代表的な方法(転写方式)
- グラビア印刷:雑誌のグラビアなどを印刷する方法(凹版)
- 活版印刷:新聞、雑誌、書籍などを印刷する方法(凸版)
- スクリーン印刷:孔版(孔の空いたスクリーン)を用いて、インクを塗布する方法
- 写真印刷:インクを基板全面に塗布した後、不要な部分を取り除く方法
このうち、絹、すなわちシルクが用いられたのが、「4.スクリーン印刷」です。
スクリーン印刷で使用する孔版は、孔が細かいほど、精細な印刷が行えます。そのため、この印刷法が始まった当時、手に入れやすい天然素材で最もきめ細かったシルクが孔版として用いられたのです。
今、現在は主に合成繊維のポリエステルが孔版として使用されますが、過去の名残りとして「シルクスクリーン」、略して「シルク」「シルク印刷」と呼ばれているのです。
シルクスクリーン印刷によるプリント基板製造工程
シルクスクリーン印刷によるプリント基板製造工程は次の通りです。 図.シルクスクリーン印刷によるプリント基板製造工程
シルク文字の大きさと線の太さ
このような工程で製造されるシルク印刷ですので、どうしても、シルクの線の太さや、文字サイズ、配置位置などに制約が生じます。
基板設計CADでは、細かな文字を自在に配置することは可能ですが、その通りに印刷されるわけではありません。あまり細い線や小さな文字で設計しても、製造限界で線が太くなってしまったり、文字がつぶれて読めなくなったりすることがあります。
逆にあまりに細い線で作って線がかすれたり、文字が小さすぎて読みにくかったりする場合もあります。
特に、シルクの印刷にはいつくかの方法がありコストや線の太さ限界が異なります。あまり細い線や小さな文字を使いたい場合には、事前にメーカーに問い合わせましょう。
写真印刷によるシルク印刷
スクリーン印刷で表現できないような細かな文字や細い線を印刷したい場合には、前述した代表的な印刷方法の1つである写真印刷法を用いる方法があります。
写真印刷法は、インクを基板全面に塗布した後、不要な部分を取り除く印刷法で、パターンやレジスト工程にも用いられる印刷法です。スクリーン印刷に比べ、精細な印刷をにじみなく美しく行え、細かな文字や細い線の印刷にも適しています。ただ、写真印刷法は、スクリーン印刷よりも生産に手間が掛かり、材料費も高価になります。
銅箔文字
部品点数が少なく、基板の表面配線スペースに余裕があるような場合、シルクの代わりに銅箔で部品番号やピン番号の文字を作成することもできます。
シルクの版代や作成工数が削減でき、基板製造コストを下げることができます。
銅箔文字は、銅箔で文字を作る方法と、ベタ面から文字を抜く方法の2通りの作成法があります。 図.銅箔文字の例
銅箔文字は、シルク文字のように細かな文字を作成できない場合が多く、作成できる文字の大きさなどは事前にプリント配線板メーカーなどに確認しましょう。
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