さまざまな基板設計手法を支えるCAD (1/2)
基板設計の核は「配置設計」と「配線設計」です。CADを利用するとこれらの設計を有機的に結び付けることができ、複数の技術者がたやすく同時に同一の基板に取り組むことが可能になります。
基板の設計手順
どのようなCADを使っても、また、CADを使わなくても、基板設計には、ある程度決まった設計の流れがあります。図1にその流れを示します。
まず、論理回路、電子回路から渡された配線の接続情報をCADに読み込む必要があります。この接続情報には、使用する電子部品の情報も含まれます。
使用する部品の情報に基づき、この部品が既にCADライブラリとして登録されているのか、新しい部品なのかを調べます。新しい部品であれば、部品の大きさやピン配列などの情報をCADに部品ライブラリとして登録します。
基板の外形や層数、配線幅や配線と配線の間隔など、設計規則の設定もあります。
ここまでの作業は実際の基板設計を始める前の準備なので、「設計のプレップ(準備)作業」と呼ばれます。
このプレップ設計が済むと、具体的な基板レイアウト設計に取り掛かります。 図1.電子機器システム開発 図左は協調設計(コンカレントエンジニアリング)を取り入れたもの
配置設計・配線設計が中心
具体的な設計としては、「部品配置設計(配置設計)」「配線設計」などがこれに当たります。基板設計と言うと、配置、配線設計だけを指す場合もあるほど、この2つの設計段階は基板設計の中心となり、時間も手間もかかります。
部品の配置は、基板設計で最も重要で、設計の良しあしを決める大事な設計です。部品の配置の良しあしで、配線設計が簡単になったり、難しくなったりすると同時に、配線結果の良しあしも左右します。
このため、特に高速信号の多い基板では、部品配置設計の始めに、フロアプランニングと呼ばれる配置検討と大まかな部品配置を行う設計段階を入れることがあります(図2)。これは、バスの引き回しや、クロック信号、バス信号、高速信号の伝送線路解析が前提となり、タイミングや終端方法を検討しながら、主要部品のおおよその配置を検討するものです。
フロアプランニングで、主要部品のおおよその配置、バスの引き回し、終端部品の位置が決まったら、これらの配置を基に、部品の配置設計を行います。 図2.一般的な基板設計フロー
全ての部品の配置が終わると、配線設計に取り掛かります。配線設計では一気に全ての信号を配線することをしません。信号を制約条件やバス信号、電源配線など、幾つかのグループに分類して、グループの優先順位に従って、グループごとに配線します。
また、配線途中で、配線の都合に合わせて、部品の配置を少しずつ移動させることが一般的に行われます。
全ての配線が完了したら、設計の確認をします。設計途中でも、そのつど行われていたデザイン・ルール・チェックを全ての項目に渡って詳細に実行します。
高速信号に対しては、伝送線路解析をして、信号波形やタイミングから、回路が誤動作しないことを確認します。エラーが発生した場合には、配線の長さや終端などを手直しして、エラーがないようにします。さらに、製造性を高めるためのCAM解析なども実行します。
最後にシルク編集や、製造用のデータを付加して、CAMデータや、ドキュメンテーション、レポートを出力します。
このような設計の流れとは別に、CADの運用では、部品ライブラリの作成、管理、設計データや変更履歴の管理などが重要です。
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本記事は、「Allegroで学ぶ実践プリント配線板設計」(発行元:株式会社ジー・ビー)から一部転載しています。