さまざまな基板設計手法を支えるCAD(2/2)
基板設計の核は「配置設計」と「配線設計」です。CADを利用するとこれらの設計を有機的に結び付けることができ、複数の技術者がたやすく同時に同一の基板に取り組むことが可能になります。
CADの運用
基板の設計とは別に、CADを運用するためにはCADデータの管理が重要です。
各種のコンピュータシステムと同様に、CADのデータはディレクトリとファイル名の拡張子で管理されています。CADでは、決められた位置にディレクトリやファイルを自動的に作成したり、多くのジャーナルファイルやログファイルを作成したりします。
このようなファイルの拡張子やファイルの意味をよく理解して、不要なファイルを削除したり、最適なファイルだけを出力するようにオプションを設定し、ファイルを整理することが必要です。ディスクの使用量を小さくできるばかりか、処理速度を早くすることもできます。
設計を再利用する
CADを利用して設計を行う大きなメリットの1つに、過去に行った設計を再利用できることがあります。
特にICやディスクリートをはじめとする部品では、多くは汎用品を使いますし、ASICなどのカスタム設計部品でも、多くは汎用パッケージを使っています。これらの部品を基板設計のたびに設計するのではなく、ライブラリとして繰り返し再利用できることがCADの大きなメリットです。
さらに基板の設計データでも、電源回路であるとか、メモリ回路であるとか、回路の一部を違う設計にもそのまま流用できる場合が少なくありません。
線幅や設計規則、層構成などもそのつど多くのパラメータを設定するのでは、設定や確認に手間もかかりますし、エラーも発生しやすくなります。このような規則もライブラリ化して、同じ条件の設計には再利用できるようにします。
例外もあります。同じ部品でもはんだ付け装置や作る場所の違いなどによって、ランドやマスクの大きさが微妙に異なることはよくあります。設計規則も、作る場所の設備や製造コストに応じて細かく変える必要があります。
設計データやライブラリを上手に管理、運用すれば、設計時間を短縮し、エラーを少なくすることができます。そのとき、間違ったライブラリを使って設計してしまうようなミスは絶対に避けなければなりません。
CADの運用では、部品ライブラリの作成、管理、設計データや変更履歴の管理なども重要です。
以上が一般的なCADの運用での問題点です。その他にも場合によって、CADの運用に注意が必要なこともあります。
バージョン管理を忘れずに
はじめに複数のCADシステムを運用する場合です。これは、異なるベンダーのCADを運用する場合はもちろん、同一ベンダーのシステムでもハイエンドの機種とローエンドの機種を使っていたり、自動配線や解析機能などのオプション機能の有無、ソフトのバージョンの違いなどから生じる問題があります(図3)。 図3.CADツールとデータのバージョン管理
次にコンカレントエンジニアリングの運用があります。コンカレントエンジニアリングとは、基板設計、ICパッケージ設計、IC設計を同時に並列して設計して行く手法です(図4)。並列設計することにより、基板設計に最適なICのピン配列、最適なドライバの強さなどを効率的に実現できるだけでなく、基板とパッケージ、ASICが同時に設計でき、開発期間の短縮も可能です。コンカレントエンジニアリングを実現するためには、基板設計、ICパッケージ設計、IC設計という異なる部門、異なる設計ツールの連携と、データの連携が必要になります。 図4.電子機器システム開発 協調設計(コンカレントエンジニアリング)
コンカレントエンジニアリングは異なるものの同時設計です。この他、並列設計という手法があります。並列設計とは、1枚の基板を複数の人間で同時並列的に設計して基板の設計時間を短縮する手法です(図5)。この並列設計のためにも、CADシステムやデータの運用に対する考慮が必要です。 図5.並列設計
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本記事は、「Allegroで学ぶ実践プリント配線板設計」(発行元:株式会社ジー・ビー)から一部転載しています。