フレキシブル基板とは
一般の硬質(リジッド)基板に比べ値段は高い、扱いが難しい、壊れやすいと言われるフレキシブル基板。それでもフレキシブル基板でしか対応できない設計が存在します。このシリーズでは、フレキシブル基板の利点や欠点を紹介していきます。
フレキシブル基板とは
通常プリント基板といえば、基材が硬い硬質(リジッド)基板のことで、ある程度の厚みがあり、曲げることはできません。フレキシブル基板とは、材料に柔軟性のある材料を使ったプリント基板のことで、回路全体を曲げて使うことができます。名前に基板と付いていて、加工工程にも共通しているところがあるので、似たようなものと思われることがありますが、実は両者は似て非なるものと言って良いほど違っているのです。車に例えていえば、バスとトラック以上の違いがあるといってもよいほどです。
フレキシブル基板の特徴
フレキシブル基板の最大の特徴は、なんといっても柔軟性があって曲げられることですが、これから派生して、様々な特徴が出てきます。一方で、どんな硬い材料でも、とことん薄くしてやると、柔軟性が出てきますので、ガラスのような極めて硬い材料でもフレキシブル基板の基材として使える可能性があります。ただし、一般に良く使われているベース材料は、耐熱性の良いポリイミドフィルムです。その他、PETフィルム(ポリエチレンテレフタレート)も結構使われています。
典型的なフレキシブル基板は、基材に薄いプラスチックフィルムを使っているので、軽量で、スペースを取りません。したがって、携帯電子機器の配線には、必要不可欠な存在になっています。最近のディスプレイパネルは、薄型化、高精細化が進んでいますので、その配線は基本的に高密度フレキシブル基板です。また、曲げられることから、プリンターヘッドの配線、ハードディスクドライブのように機械的な駆動部がある機器の標準配線材料となっています。派生して、次のような特徴を挙げることができます。
- 機器の軽量化に有効である。
- 機器の小型化、薄型化に有効である。
- 構造の多様性が大きい。
- 高密度配線ができる。
- 様々な接合方式が適用できる。
- 三次元配線ができる。
- コネクタを省ける。
- 誤配線を防げる。
- 耐屈曲寿命が長い。
- RTR(ロール・ツー・ロール)生産方式が使える。
- トータルでコストダウンができる。
多くの特徴と利点がある一方で、フレキシブル基板には少なからず弱点があります(「フレキシブル基板の長所と短所」を参照)。フレキシブル基板を採用するにあたっては、他の配線方法では目的が達成できないことがキーポイントになります。そして、フレキシブル基板によって生じる問題点をいかにして取り除くかが、設計者の腕の見せ所になります。
豆知識「FPCとは」
メーカーなどでは、FPCという言葉使っていることがあります。これは日本の業界だけで使われている俗語で、海外の業界では通じません。欧米では、Flexible Circuit、Flex Circuitのような用語が使われています。最近、台湾や中国ではFPCBという用語が使われているのを見かけますが、これも俗語で、他の地域では通じません。 図.様々なフレキシブル基板
< 前の記事 | 記事一覧 | 次の記事 > |
---|