屈曲部の設計
フレキシブル基板の最大の特徴は曲げられることですが、無制限に屈曲できるわけではありません。不適切な設計ではたった1回の屈曲でも断線してしまいます。屈曲部の設計の「きほんのき」を今一度確認してみましょう。
より高い耐屈曲性を得るには
フレキシブル基板の耐屈曲性にはさまざまな要因が絡んできます。主な要因としては、層構成、材料の選択、回路パターンの形状、曲げモードなどがあります。また、メーカー技術による差も少なくありません。回路の用途によってはそれぞれの都合があり、必ずしも自由度が十分にあるわけではありません。限られた仕様の範囲でいかにして高い耐屈曲性を得るかが回路設計者の腕の見せ所になります。
薄いほど屈曲性は良い
容易に想像できることですが、フレキシブル基板は厚さが薄いほど柔軟性が増し、屈曲寿命を長くすることができます。したがって、導体の銅箔はもちろん、ベースフィルム、カバーレイ、接着剤の厚さをできるだけ薄くします。
単純で対称な層構成が望ましい
フレキシブル基板の屈曲部の層構成は単純で、導体層を真ん中にして対称になるような層構成が理想的です。導体にかかる機械的な応力を最小限に抑えることができるからです(図1)。
図1. 耐屈曲性の高い対称な層構成
具体的には、片面回路にして、カバーレイはベースフィルムと同じフィルムを使うようにします。両面回路は層構成が複雑になってしまうので、繰り返し屈曲するような用途の設計には特別な配慮が必要です。
導体は圧延銅箔が望ましい
フレキシブル基板には電解銅箔と圧延銅箔が使われていますが、圧延銅箔の方が柔軟性は高く(価格も高い)、屈曲用途には有利です。ただ、最近では両者の中間的な材料や、まったく異なる方法で作られる導体があり、単純な比較はできません。また、圧延銅箔は製造プロセスの都合上、薄くなるほど高価になるのに対して、電解銅箔は厚くなるほど高価になります。
回路形状はシンプルな方が良い
屈曲部はできるだけシンプルで、均一であることが望まれます。屈曲部の途中で回路幅が不連続的に変わる設計や、パッドやビアホールが途中に入るような設計も避けるべきです。屈曲部の回路に不連続箇所があると、その部分に応力が集中し、断線しやすくなるからです。屈曲部の回路に不連続な設計は基本的にNGですが、やむを得ない場合はテーパなどをつけて回路パターンがなだらかに変化するように設計し、できるだけ応力を分散させます(図2)。
図2. 屈曲部の導体パターン
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