銅張積層板の歴史
フレキシブル基板という回路製品が実用化されてからしばらくの間、使用できる材料の選択肢はわずかなものでした。加工プロセスもほとんど決まっており、基板メーカーは、ラミネートメーカーから銅張積層板を購入し、それをエッチング加工するだけでした。ラミネートメーカーとしては、外部から基材用のフィルムと、導体としての銅箔を購入し、独自の接着剤を調合して、銅張積層板を製作していました。回路の設計者としては、ベース材料としてポリイミドかPET、導体材料として電解銅箔か圧延銅箔の中から選ぶだけでした。厚さの選択肢は一応ありましたが、範囲は限られたものでした。
プロセス、材料の多様化が進んだ1990年代
1990年を過ぎた頃から、民生用電子機器、特に携帯機器に使われるフレキシブル基板に対する高密度化、多層化の要求が急激に高まり、新しい加工プロセスの導入、新しいタイプの材料の開発実用化がされ始めました。
ベース材料や導体材料の種類や厚さの範囲が広がっただけでなく、銅張積層板の種類も増えました。特に接着剤を使わない構成の製品が主要材料として使えるようになっています。
材料選択は製造プロセスと性能の理解が必要
このように材料の選択肢は広がりましたが、新しい材料の多くは、新しいプロセスと密接に関わりあっています。そのため回路設計者は、フレキシブル基板に必要とされる性能を得られるプロセスを理解した上で、必要な材料を指定することになります。特に銅張積層板はフレキシブル基板の基本特性を決めることになりますので重要です。
また、メーカーの能力確認も必要となります。プリント基板加工メーカーは、すべての面に渡って最先端の加工技術を持っているわけではありません。一般的に、加工能力には得手不得手があり、扱える材料にも制限があります。回路設計者としては、材料を選ぶだけでなく、加工能力を持った加工メーカーの選定も重要です。
銅張積層板を選定するのは誰か
一般的にはフレキシブル基板のエッチング加工メーカーは、ラミネートメーカーから銅張積層板を購入し、これを出発原料として回路を加工します。しかし、どのような銅張積層板を使うのかは、一般的に回路の設計者、言い換えればユーザーが選定して仕様書の中で指定します。したがって、回路設計者は、銅張積層板の種類と特性についてある程度理解しておくことが必要です。
銅張積層板の種類
フレキシブル基板用の銅張積層板には、素材や製法により次のような種類の製品が販売されています。なお、名前は業界の俗称です。”1”を除いた残りの銅張積層板は無接着剤タイプと呼ばれています。各タイプの詳細は、次項で説明します。
1.接着剤タイプ
2.キャスティングタイプ
3.スパッタリング/電解めっきタイプ
4.熱ラミネーションタイプ
5.無電解めっき/電解めっきタイプ
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