厚さの寸法仕様
フレキシブル基板の特徴である「薄さ」。薄さを求めるには、どの工程を気をつけるべきでしょうか。「フレキシブル基板の寸法仕様」の続編として、「厚さの寸法仕様」について取り上げます。
厚さの仕様はフレキシブル基板の重要項目
フレキシブル基板の物理的な特性は、材料の選択と厚さの仕様で決まってきます。またモバイル機器の配線においては、極めて狭いスペースしか与えられないことが多く、フレキシブル基板全体の厚さをどこまで抑えられるかが重要です。
最終的な設計においては、総合厚さが問題になるわけですが、それをきちんと管理するためには、個々の構成材料の厚さの仕様を明確に理解しておく必要があります。
構成材料によって厚さの仕様が異なる
フレキシブル基板を構成する材料には、ベースフィルム、銅箔、カバーレイフィルム、補強板、それに各層を張り合わせる接着剤があります(図1)。接着剤以外の材料は、それぞれ専用の製造設備で個別に作られるので、厚さのバラツキは±10%ぐらいには収まります。ところが、接着剤はラミネーションや貼り合わせのプロセスで微妙に変化しますので、接着剤部分の厚さの仕様をきちんと決めることは簡単ではありません。
図1. 層構成と厚さの精度
フィルムや銅箔の厚さは正確
ベースやカバーレイに使われるポリイミドフィルムやポリエステルフィルムの厚さは良く管理されており、それぞれ±5%ぐらいの範囲に収まります。
銅箔は、電解銅箔と圧延銅箔とでは、若干事情が違ってきます。圧延銅箔は、両面とも平らな鏡面になっているので、厚さは高精度で決められます。一方、電解銅箔は片面側の凹凸が大きいために、定義によっては厚さが大きく違ってきます。確かなのは「面積あたりの重量平均で厚さを決める方法」ですが、この方法は物性を考えると問題があります。電解銅箔の場合は、ケースバイケースで厚さを決めていかなければなりません。
接着剤は使われ方で厚さの精度が変わる
先ほど触れましたように、接着剤は加工プロセスで厚さが変わってきます。樹脂のフローや硬化が起こりうるからです。銅張積層板の接着剤は、完全に硬化が済んでいるので、後のプロセスで厚さが変わることはほとんどありません。しかし、補強板用の接着剤は、粘着タイプと熱硬化タイプによって厚さの精度が変わります。前者は、比較的小さな圧力がかかるだけなので変化量はわずかなのですが、後者は熱と高い圧力がかかり、しかも効果プロセスで縮むのでどうしても変化が大きくなってしまいます。
カバーレイフィルムの接着剤層は、貼り合わせ過程でフローが生じるので、結果として厚さはかなり変化します。しかも、回路の厚さや密度に大きく左右されますから、実績に基づいたデータを蓄積しておくことが必要です。
厚さにおいても、実績値に基づいて正しく細かく仕様を指定していくと、より完成度の高い基板作成につながります。
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