フレキシブル基板専用の接合技術 ―異方導電性材料、ワイヤボンディング、ダイレクトボンド―
フレキシブル基板で使用可能な接合技術は、まだまだあります。異方導電性材料、ワイヤボンディング、ダイレクトボンドについて、それぞれ説明します。
はんだ付けの代わりに異方導電性材料で接合
異方導電性材料とは、接着性のあるプラスチック樹脂の中に微細な導電性の粉体を適当な量練り込んだものです。フレキシブル基板と接合基板との間に挿入し上から熱圧着をすると、上下に導体が重なっている部分のみ導通が形成されます(図1)。
異方導電性材料には粘着フィルムタイプ(ACF: Anisotropic Conductive Film)と、ペーストタイプ(ACP: Anisotropic Conductive Paste)があります。ペーストタイプは、スクリーン印刷で、接続部に塗布します。
図1. 異方導電性ペースト(ACP)のメカニズム
異方導電性材料中の導電性粉体の粒径の範囲と練り込み量を適切に制御すれば、0.05mmピッチの微細パターンを接合することもできます。フラットパネルディスプレイのドライバーモジュールの接合方法の多くは、この方法が用いられています(図2)。ただし、この方法は接触抵抗が大きいため、大電流を流すことはできません。また、基本的に脱着は不可のため、取り外しての修理ができないことも注意しましょう。
図2. フラットパネルディスプレイへの接続例
信頼性の高いワイヤボンディング
ワイヤボンディングは信頼性が高い接合方法です。半導体の実装方法として広く使われていますが、条件を若干変えることでフレキシブル基板にも適用することができます。ワイヤボンディングは金属間接合のため、電気的に高い信頼性が得ることもできます。
接合方法の基本的な構成は、リジッド基板の場合とほぼ同じで、まずICチップを接着剤で固定し、チップ側にボールボンディング、フレキシブル基板側はステッチボンディングで接合を行います。接合するパッドには、あらかじめ軟質の金メッキを施しておき、チップが搭載される部分の下側には、補強板を貼り付けて硬くしておきます(図3)。
図3. ワイヤボンディング断面図
ワイヤボンディングは機械的な強度が期待できないので、プラスチック樹脂などで封止(ポッティング)して、外力に対して保護します。ワイヤボンディングは、基本的に永久接続なので、やり直しや修理はできません。
図4. ポッティング
フライングリードを使用したダイレクトボンド
フレキシブル基板は、部分的にベースフィルムを除去することで、裸の導体回路を形成することができ、これをフライングリードなどと呼んだりします(図5)。その線幅を細くし、表面に金メッキを施せば、ワイヤボンディング用の金線と同じように扱うことができます。ただし、特殊な製造方法になるため、製造工場との密な打ち合わせが必要です。
図5. フライングリード
フライングリードを金線と同じように、相手側の回路やデバイスのパッドにボンディング処理を行えば、金属間結合が形成できるため、信頼性の高い接続になります。この接合方法をダイレクトボンドと呼び、インクジェットプリンタのインクカートリッジ、HDDのヘッドサスペンション、超音波診断器のプローブなど、高密度で高い信頼性を必要とするところに、大量に使われています(図6)。
図6. ダイレクトボンド
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